こんにちは。
今回は、弱視者である自分が「視覚障害者や弱視者がカメラで野鳥撮影を行う方法」を紹介します。実際に一眼カメラで撮影した経験や、撮影をカバーしてくれるカメラ技術のテクノロジー、撮影を補助してくれるカメラアクセサリーも紹介します。
目次
視覚障害と野鳥撮影・野鳥観察
生まれつき=先天性の視覚障害(弱視・眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が困難)である自分は、野鳥撮影においては裸眼で野鳥の姿を捉える事ができません。
また、音を頼りに双眼鏡や単眼橋を覗く事でなんとか見る事ができても、複雑な雑木林では巧みに溶け込む野鳥は容易には見つけられません。また、運良く視認できても、珍しい野鳥は一瞬で飛び去ってしまいます。
以上を踏まえても、視覚障害者がカメラで野鳥を撮影する事がいかに難易度の高い技術か。これは健常人ではなかなか想像できない事でしょう。
全ての障害の中で「最も情報的不利」な視覚障害
人間は生きる上で、周辺環境や情報収集は五感のうちほぼ視覚に頼って生きています。
つまり、視覚障害は他のいかなる障害よりも情報的不利があると言えます。そして、情報的な不利は全ての行動に制限がかかります。例えば幼少期の友人関係や学問において、そもそも人の表情や黒板の文字、教科書の文字を認識するのに健常人の倍の時間を要し、場合によっては物理的に困難な側面(壁)があります。
つまり、机上課題=テスト=学力、や社会に溶け込む上で、幼少期からの発達段階でこれだけの不利・壁があります。これは、学力や進学・就職に直結する為、視覚障害者は全般的に学力が低く、マッサージ師などの低年収な職種にしか就けない傾向にあります。また、スポーツに関してもボールが認識できない為、体育の授業の半分以上を占める球技全般が困難となり、これにより部活動の制限や運動神経の発達に大きく影響します。更に、自動車の免許が一生涯取得できない事で、地方に住む事が困難となり、地価が高く駅徒歩圏内の利便性の高い地域に住むしかなく、経済状況はかなり厳しくなります。外出先やディズニーランド内の移動においても、案内板は見えずGoogleマップ等の地図を見る時間もかなりの時間を要します。情報的不利は、日常生活全ての移動において非効率となります。視覚障害を持つ友人が良く言うのが、案内板自体が見えないから目的地以前に案内板を見つけるのに時間がかかる。広い建物に入っても受付まで辿り着けない等々、やはり情報的不利は行動制限に直結しています。
では逆に、四肢麻痺や肢体不自由・片麻痺・人工透析・聴覚障害者などの身体障害を見てみましょう。不整地歩行や登山など極端な環境は弱いですが、その多くが自動車免許を取得する事ができ、地方で平家を経てバリアフリーな生活が可能となります。また、最も情報収集に大切な視覚が保たれていれば、人間関係や学習・就職にも有利な為、健常者と同等の学力が身につきます。実際に人工透析をしながら社会人として働いている人間は数多く居ます。
ここでは、視覚障害が如何に全ての行動において不利なのかを述べてみました。
視覚障害(弱視)の自分が野鳥撮影を可能にする方法
このような視覚障害(弱視)を持つ自分が野鳥撮影をどう攻略・可能するか。
カメラの最新技術とテクノロジーに託す
ひとつは言うまでもなく、より打率が上がるようカメラ機材にお金をかける事です。
連写性能に優れ、よりAFが速く正確なカメラを所有し、視覚で低下した部分を最新テクノロジーでカバーする方法です。
αのEVFがまさにこれであり、光学ファインダーでは絶対に見る事ができなかった世界が、ミラーレス一眼カメラで可能となりました。そして、ソニーのα1iiと言う最新かつフラッグシップ機を手にする事で、より確実に野鳥撮影が行える準備をしました。
- EVF(電子ビューファインダー)を搭載したカメラ
- 高い連写枚数
- 高いAF性能(最新のAIシーン認識)
自分の身体に撮影スタイルを合わせる
次に、野鳥が居る場所をどう見つけるか。
その答えが「追っかけ」ではなく「待機」と言うスタイルです。視力が良い健常なカメラマンは、自力で野鳥を見つけ追いかけながら撮影が可能です。しかし、自分は自力では見つけられない為、現地のカメラマンと情報共有を行い、野鳥の習性から待機していれば野鳥の方から来てくれる場所に張り込んでみる事にしました。
時間や効率は非常に悪いですが、これにより音の方向にカメラを向ける事でなんとか野鳥を撮影する事が可能です。
単眼鏡とカメラアクセサリーで追い込む
しかし、通えば通うほどに不便さを感じ、もっと早く正確に野鳥を捕捉できないか。
今現在は、周りのカメラマンの助言やその方のカメラを向けている方向に自分もカメラを向けて、なんとか野鳥が捉えられている状況です。つまり、他人のアシストが無いと野鳥は絶対に撮影できません。
しかし、500mmクラス以上の超望遠レンズでないと野鳥を視認できないとなると、そもそも画角に入れるのは至難の技。そこで、ドットサイトのように双眼鏡や単眼橋をカメラに装着できないか。これは、野鳥撮影を再開する前、つまり2014年当初も感じていた要望です。
そして、10年ぶりに本格的に野鳥撮影を再開した2025年現在、遂に理想的なカメラアクセサリーを見つける事ができました。
こちらがアマゾンで見つけた視覚障害者が野鳥を撮影する手助けをしてくれる。
そう確信できるシュータイプのマイクスタンドです。過去にもマイクスタンドは色々発売されていましたが、製品情報に単眼鏡も装着できるように書かれていたのはこの一点のみ。
装着できる幅も十分な長さで調節可能であり、上下方向(矢状面)の角度調整も可能となっています。視力の良い健常人はドットサイトで野鳥を捕捉しますが、視覚障害があるとドットサイトでは野鳥が見えません。
そこで、超望遠レンズとドットサイトの中間の画角の単眼橋を装着する事で、カメラの電源を切ったまま野鳥のおおまかな位置を探す事ができる訳です。
まとめ
今回は、自分のような視覚障害(弱視)を持つカメラマンでも、野鳥撮影を可能にする方法やアクセサリーをまとめてみました。今回紹介したアクセサリーはこれから購入する予定であり、今後の野鳥撮影で活躍してくれる事を期待しています。
SONY α1ii+SIGMA 500mm F5.6 DN DN
こちらは先日に自宅から自転車圏内のマイフィールドで撮影したヤマガラの飛躍。
裸眼で野鳥が全く見えない、視覚障害を持った人間が撮影したにしては、上出来では無いでしょうか。これは上で紹介したアクセサリー無しで撮影しています。これも、ソニーα1iiのおかげといえます。
最後に
最近知りましたが、日本には日本野鳥の会と言う会社が存在するそうです。
野鳥の情報発信や観察会の開催、野鳥撮影に必要な道具の販売などを行なっているそうですが、なんと視覚障害者向けの野鳥観察会を行っているとか。
しかし、調べると京都や神戸のみであり、関東地域ではそう言った企画は無いそう。そもそも、視覚障害とカメラは相性が悪すぎる組み合わせの為、世の中の視覚障害者がカメラを趣味にする事自体が非常に稀な訳です。
日本野鳥の会さんには、是非関東地域や東京でも、視覚障害者向けの野鳥観察会を開催して貰いたいと思います。そしてら絶対に参加します。そして、自分は今後も視覚障害者(弱視持ち)のカメラマンとして、野鳥撮影に挑戦していきます。
それではまた。